キミが好きだよ

この時間が ずっと続くならいいな

ブルームーン 初日

0523@ 東京グローブ座

 賑やかな繁華街を少し入るとある、素朴 でもとても存在感のある建物。 いつも画面越しで見るような世界がそこにはありました。
 会場に入ると、お寺があって、和風で古風なグローブ座の柱や空間がそのセットと相まって、舞台だけじゃなく、客席も含め、会場全体がお寺に変わっていて圧巻された。その光景を見てまず席についてひと息、そそくさとバッグからタオルを取り出してひとりで声をこらして泣いてた。 ずっとこらえていたもの。 横山くん、あたたかい世界だね。

 まだ誰もいないお寺で振り子時計だけがずっと静かにさりげなく動いていて、そして2:30を指した途端に物語は始まるのです。この時、最初からそこにあったその時計が、まさかこの物語の大きな鍵だったとは思いも知らず。

 物語が始まり、いつしかユタカくんが登場して、急に胸がぐっと熱くなった。 主演舞台をすると初めて聞いたときの胸のいたみを少し思い出した。 あの時、わたしはどんどん進み続ける横山くんがとてもたくましかった、けれど、心のどこかで少しこわくて戸惑っていたのかもしれない。 だけど、横山くんが主演舞台を演じるまでの過程、たくさんの媒体を通して、低姿勢な姿、この挑戦や緊張を「楽しんでいる」と知って、横山くんに「負」の感情は全くなくて、これが何も無理をしていない自然な横山くんのスタンスで、横山くん自身は何も変わらないいつもの大好きな横山くんなんだ、と、つっかかっていたもやもやがすっととれて純粋に横山くんを応援することができたのです。 横山くんの主演舞台を知って胸がざわついた、そんなわたしを想ってくれる沢山のお友達がいて暖かさを沢山いただいた、横山くんの舞台を思って何度も泣いた、だけどまたそこでも大きな暖かさを知って、そして今、わたしはここにいる、と。 この目にはっきりと横山くん演じるユタカくんが映っていて、動いていて、話していて、怒っていて、嘆いていて… その想いがふとした瞬間に何回も何回も巡ってきて、面白いシーンでも涙が出るのです、くるしいのです。だけどそのくるしさは素敵なくるしさなのです。 幸せなくるしさなのです。 トランペットを吹く姿を初めて見た、あの名古屋のときのように。

 物語は次々に進み、そのユタカくんの世界にすっかり入り込んでしまった。この舞台を観るまで、わたしの中での向坂ユタカは ユタカ「さん」 だったのだけど、大人な優しさの中に少し子どものような純粋さを兼ね備えた彼は観終わった頃には ユタカ「くん」になっていた。 横山くんが 自分に似ているところがあるかもしれない と言っていたわけがわかった気がしたのです。 横山くん演じるユタカくんは、ユタカくんという一人の人物でしかなかったけれど、怒るも嘆くも感情が高ぶると、そこにいたユタカくんはふと元の横山くんに変わって見えてしまうわたしがいたから、その都度胸が締め付けられてしまったのです。 ふとユタカくんの向こうに横山くんを重ねてしまう、そんな瞬間がありました。 そしてわたしはユタカくんにも恋をしたのかもしれない、ユタカくんに釘付けになって、結末は決まっているのに幸せをただ願っていた。

 舞台の演出も細かくて素敵で。 少し会話が賑やかなシーンで登場人物に視点を集中させている間に巻き戻る振り子時計の針、ホコリの積もった振り子時計、過去と未来で変わるお寺の外の景色、タイムスリップするとトニーの楽屋になって増えるお部屋の荷物。 その演出に1つ1つ気づいた瞬間、なんて楽しい気持ちになっただろう。 本当にその場にお寺があった、その言葉しか出てこないくらいリアルで、舞台の面白さを堪能できました。

 演技中、横山くんは決してリラックスできていたようではなかったけれど、わたしがユタカくんに恋をしてしまっていたからか、緊張しているようには思えないほどのスムーズさでユタカくんと共に物語は進んで、もう一度、色んなことがわかって少し慣れてきた横山くんが演じるユタカくんに逢ってみないことには、あの時少し力が入ってしまっていたのかどうか、自分なりの答えはわからない。 大阪でユタカくんに再会した時に、この思いの真実がわかるんだと思う。

 はじめましてのユタカくんは初々しくてとても新鮮だった。 だけど、ずっと前から目の前に見えてあるお寺に住んでいたかのような感覚に陥った。
 自分との格闘だったり、いろんな苦境を乗り越えてどんどん強くなっていくユタカくんだけど、最後の告白の時までもルミさんに引っ張られに引っ張られる。 お互いに強気になっているけれど、結局ルミさんには勝てないユタカくんの存在がとても愛しかった。 だからこそ、素直になれない2人の物語の2人らしい結末があんなに幸せで可愛らしい空間で本当に本当に嬉しかった。 最後だけ少しユタカくんがルミさんをリードする姿(ダンス面で)を見たとき、お互いを尊敬しあっている心の中の2人を目で見ることができた気がしてほっとした。

 カーテンコール、そこには横山くんがいた。 本当はずっといたけれど、ユタカくんではない、いつもの横山くん。 照れくさそうだけど、真剣なときに見る 無意識に下唇を噛む姿、座長としてたくましくお辞儀をする横山くん。 はけても拍手がなりやまない。 素敵な空間はずっと続いていた。
 2回目、横山くんが共演者を連れて出てくる度に横山くんの表情や行動はますます照れくささを隠しきれなくなっていて、素の横山くんがだんだんと現れてきた気がしたのです。緊張が解きほぐれた瞬間だったんだろうな。その瞬間が横山くんの言っている挑戦の先にある楽しみなんだろうなあ。
 3回目のカーテンコール、スタンディングオベーション。 こんな光景今までドラマ以外で見たことがなかった。 そんな素敵なものを横山くんの主演舞台で見ることができたなんて。 お客さんにどう感じ取ってもらえるか、といつもお客さんを第一に考えていたから、そんな光景を見て、緊張や大変なことも沢山あった中で 横山くんが思っていたものがちゃんと完成できた証拠だなと思って、横山くんがとてもとてもたくましくて涙がぽろぽろ止まらなかった。 今でも思い出す度に。 横山くん、本当によかったね。 最後にはけるときも、くるっとふりかえって何度もお辞儀をして、照れくさそうに「座ってくださいね、ありがとう。」と言わんばかりの優しそうな表情を浮かべていた。 横山くんが見えなくなっても、わたしはしばらくそこに立っていた。

 横山くんが主役を演じていると思うだけで胸がいっぱいになって、よかったね、本当によかった、わたしもそんな姿を応援できてよかった、ってずっとずっと眺めてた。 喧嘩や怒ってばっかりなのにそれを楽しく見ることができたのは、ユタカくんがそこにいて、ユタカくんのことを大切に思う人達がいて、みんな可愛らしくて。 そしてお客さんもそこにいて、わたしがいて、身内のとある物語 のように、自分も輪に入って日常にあったことを見ているように感じてたから。 喧嘩の中には常に思いやりや暖かさがあったからなのかもしれないなぁーって。 

 20:15頃終了。
 頑張ろうって気持ちになるというよりは、自分らしく生きていこう、と思った。 「運命は、いつでも遠回り。」でも、それまでの長い道のりに、自分を見つめなおす大切な何かがあるんだよ。 そう聞こえた気がした。
 物語が終わっても、平凡な暮らしの中に幸せを見つけたユタカくんの世界がこれからも輝き続けてほしいと願いたくなる、そんな物語。明日もどうか幸せでいてね。

大阪にユタカくんが来るまでに書き留めたかったこと。 東京25公演おつかれさまでした。 大阪10公演も無事に走りきれますように。